株式会社中村衞商事 Blog

「関西人は本当に良い雲丹を知らない!?」— ウニの“北海道産・東京発・海外行き”構造を考える —

作成者: 代表 中村 文衛|Nov 17, 2025 11:55:43 AM

 

こんばんは。
少々煽り気味のタイトルですが、最近、本気でそう感じる場面が増えてきました。

結論から言うと、「最高の雲丹」は、もはや日本国内には少量しか残らず、香港・ニューヨークなどの海外に流れている──これが、現場にいる人間としての実感です。

では、なぜそんなことが起きているのか。

-なぜ最高の雲丹は日本に残らないのか-

まず、大前提として。

雲丹は中央集権的に東京・豊洲市場に集まります。毎日大量の雲丹を効率的に捌く為に、確立されたシステムで物流コストを鑑みて、合理的な方法で、北海道の離島で獲れた雲丹もロシアで採れた雲丹、東北の雲丹も、まずは豊洲に集約されるケースがほとんです。

そこで何が起きるかというと──

競り(セリ)でのマネーゲームです。

  • 歩留まりが良く、甘み・旨みが抜群のロット
  • 色・形・香り、すべてが揃ったロット

こういったものは、豊洲で一気に値段が跳ね上がります。悪天候が続く日が続けばさらに値段は跳ね上がります。

そして、

その「跳ね上がった値段」に平然と乗れる買い手が、

今、一番多いのが 香港・シンガポール・ニューヨークなどの海外勢と

都内の一部の超高級寿司店・会員制寿司屋です。

私自身某輸出会社から、

「中村さんが売りたいと思う金額で出してええで。なんぼでも良いからさ」

と言われたこともあります。

「お金を持っている地域・人」に雲丹が流れる。

資本主義としては当たり前の構造ですが、雲丹は贅沢品のためその傾向が強く反映されます。

豊洲で超一級品と評価された雲丹は、以下のような流れになりやすいです。

  1. 豊洲で相場を度外視するような高値で落札される
  2. 輸出業者のルートで、香港・NYなどへ
  3. 現地の高級すし店やオーベルジュ、会員制レストランに並ぶ

するとどうなるか。
日本の一般的な飲食店の「予算感」からは完全に外れてしまうのです。

日本国内の多くの店はこう考えます。

  • 「雲丹にここまで出せない」
  • 「コースの値段に合わない」
  • 「他の食材とのバランスが崩れる」
  • 「この値段なら、お客さんに理解されない」

私自身営業している中で、このようなお言葉は何度もいただきました。

こうして、最高レベルの雲丹は、そもそも日本のテーブルに乗ることすらなく、飛行機に乗っていく。

これが、いま起きている現実です。

関西の「ウニ体験」が歪みやすい理由

では、なぜタイトルに「関西人」を出したのか。

もちろん、自店舗の努力で独自の仕入れルートを使って良い雲丹を仕入れ、

関西にも素晴らしい雲丹はたくさんあります。


ただ、物流・商流構造的に「雲丹のアンテナ」が東京よりも立ちにくいと感じることが多いのです。

理由として──例えば

  • 仕入れの入り口が「東京」であること
  • ローカルな商流や、昔からの付き合いで仕入れ先が固定されている
  • 「ウニ=このくらいのレベルでしょ」という暗黙の基準が出来上がっている

結果として、

「これが最高やで」と出されているウニが、
豊洲目線・海外目線で見ると“中の上”くらいのこともある

というギャップが、実際にあります。

「関西人は良い雲丹を知らない!?」という挑発の裏側

正確に言えば、

「関西人は、“世界のトップレンジの雲丹”に触れる機会が、構造的に少ない」

というのが、僕の実感です。

決して、

  • 舌が肥えていないわけでも
  • 食文化のレベルが低いわけでもなく

むしろ、出汁文化が根付いた関西こそ、
本当に良い雲丹のポテンシャルが一番伝わる地域だと思っています。

ただ現状は、

  • 豊洲を経由したマネーゲーム
  • 海外の富裕層マーケット
    に良いロットが吸い上げられてしまい、

「関西のテーブルまで、世界トップの雲丹が降りてこない」
という、もったいない状況が続いているのです。

だからこそ「産地と料理人を直接つなぐ」ことが必要

この構造を少しでも変えるには、

  • 産地(漁師・加工場)と
  • 料理人(すし店・割烹・レストラン)

を、もっとダイレクトにつなぐルートを増やすことだと考えています。

  • 産地から関西へ直送する
  • ロット単位で「この漁師の、この磯の、この時期だけ」の雲丹を漁の前に押さえる
  • 料理人と一緒に「どこまで味を追求できるか」を対話しながら仕入れる

こういう動きを積み重ねていけば、
「世界レベルの雲丹が、関西のカウンターに並ぶ」未来は、決して夢物語ではありません。

最後に──「ほんまにうまい雲丹」を一緒に確認しませんか

もしこの記事を読んで、

  • 「自分が今まで出してきたウニは、どのレベルなんやろ?」
  • 「一度、本気の雲丹を食べ比べしてみたい」
  • 「お客さんに“次元の違う雲丹”を出してみたい」

と少しでも感じていただけたなら、
それはもう、“本当に良い雲丹”に出会う準備ができているということだと思います。

関西だからこそできる雲丹の楽しみ方があります。
出汁文化を持つ街で、世界レベルの雲丹をどう表現するか。

「関西人は本当に良い雲丹を知らない!?」
このタイトルを、数年後に

「関西人こそ、本当に良い雲丹を知っている」

と言い換えられるように。
産地から、少しずつですが、動いていきます。

現状の構造では、雲丹から逃げると言うのも一つ選択肢かと思います。